光のラグジュアリ

2023.08

団地の一室の改修である。

元々この部屋で暮らしていたクライアントから、東欧での数年間の生活を経て再び日本に戻ってきたことを機に改修の相談をいただいた。

かねてより南と北の両面に窓をもつ団地の形式には豊かさを感じていた。とくにこの部屋は5階で光と風が気持ちよく通り抜け、まわりには視線を遮るものもなかった。

そこで「光のラグジュアリ」をテーマに異なる反射率の素材を組み合わせることで、豊かな光を受け止めふとしたときに光のうつろいを感じられる空間を構想した。

団地の形式上、玄関を入った正面の軸が南北どちらの窓からも一番遠く、一般的に最も暗い場所になる。そこで玄関の正面に廊下を新しく設け、空間の骨格とした。そこは反射率の高い象徴的なタイル床の、光を反射させる空間である。廊下は滞在する場所ではないがどの部屋からも目に入る空間なので、その床に光を反射させ生活の中に自然な形で揺蕩う光を存在させたいと考えた。

「光を反射させる」廊下に対し、部屋の壁は東欧のアパートを参照しカラフルながらも彩度の低い色の穏やかで落ち着きのある「光を受け止める」面としている。床も部屋ごとに素材を変えているが、廊下とは対照的な「光を吸収する」素材を選定した。

「光」と「色」の掛け合わせで、場所ごと、時間ごと、季節ごとに空間の表情は変わっていく。日常の中に落とし込まれる光の移ろいは新しい発見をもたらし、日々の暮らしを豊かにすると考えている。

用途:住居
工事種別:リノベーション
設計期間:2023年4月~5月
施工期間:2023年5月~8月
主体構造:RC造
階数:団地5階部分
面積:47.27㎡
所在地:千葉県千葉市
写真:佐藤亮介 (※印はクライアントによる撮影)