HOUSE AB

2015.02

はじまりは新築住宅の相談を受けたことだった。「買うならここにしようと思っている」という土地があり、その土地に新築を建てるなら何が出来るかを提案して欲しいとのことだった。

もちろん喜んでプランニングしプレゼンテーションを行ったが、そのプレゼンテーションとともに「工務店と一緒に、購入前に既存建物の確認もするので、状態の良い中古住宅を購入してそれをリノベーションするのはどうか」と提案した。

好みや希望を聞いていると古いものに価値を見出し、メンテナンスしながら上手く付き合っていくのが得意そうだったし、リノベーションという選択肢が住まう場所の可能性を広げると感じたからだ(土地に掛けられる予算からはじき出され、仮選定されていたのは交通の便が良いとは言えない郊外地だった)。

「それは考えていなかった。おもしろそう。」と好意的なリアクションをした施主が、お子さんの通っている幼稚園に近く、仕事場まで乗り換えなしで行くことの出来るこの建物を見つけるまでにそう時間はかからなかった。

その時々の状況や好みに合わせて自分のまわりを居心地よく設えるのが上手い人がいる。。
そういう人はライフステージや家族構成や社会の状況によって、必要とするものや好みが変化していくことを理解している。

だから、おおらかな空間をつくることを意識した。

それぞれの空間のスケール感や空間と空間の繋がり。
みんなと居たいときもひとりになりたいときも居場所があること。
そしてそれらが緩やかに連続していること。

そうした空間さえつくることができれば「あとはいかようにも良いようにしてくれるでしょう」という施主に対する信頼感があった。

「住み心地」の良さは「住みこなし」ながら住み手がつくっていくものだと思う。
僕がそう考えているからか、ここ最近「住みこなす能力」の高い人たちばかりがお施主さんになって下さっている。これは有り難い半面、非常にシビアでもある。彼等は気に入らなくなったり、生活スタイルに適さなくなれば空間のフレームですら簡単に編集してしまうからだ。

けれど、だからこそ、包容力がありバランスの良い空間を提供出来る建築家が必要なのだと信じている。

用途:住宅
工事種別:リノベーション
設計期間:2014年7月~10月
施工期間:2014年11月~2015年2月
主体構造:木造
階数:2階
延べ面積:98.15㎡(改修)+5.06㎡(増築)
所在地:千葉県千葉市