通り土間のある平屋

2021.12

郊外に建つ木造新築住宅である。

前面道路は車の通り抜けができない落ち着いた道であり、敷地の背後には鉄道線路が敷地よりも少し高い位置を走る。
一方、両横の敷地は近い将来に所有者の変化が起こりかねない状況で、用途地域や立地の条件から3階建てのアパートが敷地いっぱいに建つ可能性を否定できなかった。
そこで、敷地の前後方向(南北方向)に通り抜けを作ることを第一の骨格とした。

二つの棟で、玄関から裏庭(+借景となる鉄道敷地の緑化された斜面)へと抜ける通り土間を挟む構成とし、それぞれの棟も南北立面では棟の中心に大きな掃き出し窓をもつシンメトリーのデザインとした。建物全体として中心に南北の通り抜け(通り土間)、それぞれの棟自体も中心に通り抜けを持つ形式である。

次に、これらの南北軸と直行するように棟を行き来するための二つの通り道をしつらえた。通り道の正面には小窓を据えた。
南北・東西の二つの軸の交点に立つと端から端まで視線が抜け、建物の最大距離を感じられる。更に視線は窓の外へと抜けていくので、実際の面積以上の拡がりが感じられる。

二つの棟は、天井高さが3.4mの開放感のあるLDK棟と同2.2mの落ち着いた寝室棟であり、半屋外の通り土間を介することでそれぞれの棟の活動が独立するため、例えば家族が寝静まった夜遅くに帰宅しても気を遣わずリビングで過ごすことができる。また、部屋から部屋への移動が空間体験と相まって、ちょっとした気持ちの切り替えの契機となることを期待している。

用途:住居
工事種別:新築
設計期間:2021年2月~8月
施工期間:2021年9月~12月
主体構造:木造
階数:平屋
敷地面積:153.11㎡
延床面積:71.07㎡
所在地:千葉県八千代市
写真:佐藤亮介