ひかりにわ -Glare-

2023.04

八千代市にあるTRC八千代中央図書館とオーエンス八千代市民ギャラリーの入る複合施設の中庭にインスタレーション作品の展示を行った。この作品は2023年4月6日から2025年3月15日まで約2年間にわたり展示された。

この中庭が“光庭”と名付けられていると作品構想時に知った。しかし“光庭”という名前はフロアマップなどには記載されておらず、施設利用者には知られていないようだった。さらにその庭に面するガラスにはスモーク(ドット)のシールが下から上にいくに従い密になるように貼られていたため、透き通って見えるのは庭の床面だけであり、庭の上に広がる空を見ることはできなかった。
「光を室内に届けるための庭」という意味では“光庭”という名前は適しているのかもしれないが、あまりにもささやかな光で、「来館者で、この庭にそそぐ光を強い意識とともに受け取った人はほとんどいないのではないか(この庭から漏れる光はみな無意識に感じてはいるだろうが)」と想像した。

そこで、わずかなふるまいでもう少しだけこの庭の光を強く感じさせることができないかと考え、壁面にいくつかの鏡を貼った。まるでいままでもそうであったかのように。
加えて地表面にもいくつかの鏡を置き、庭の中心にはドーム型のミラーを置いた。これにより、初めて中庭の上に広がる空が見えるようになった(ミラーの反射を通して)。その空は鏡によりわずかに像をゆがめられているし、鏡に映った範囲しか見ることはできないが、鏡という小さな手掛かりが空を想像するきっかけにはなる。

展示開始時期はウクライナへのロシア侵攻から1年がたち、それでも情勢は不安定な時期だった。その後、イスラエルによるパレスチナへのジェノサイドと呼んで差支えないような攻撃も起こった。そういったことも念頭に置いて、ステートメントには下記のように記した。

「小さなふるまいで、見えないものを見えるようにするのは簡単ではありません。けれど、想像すらしてみなかったことを想像してみるきっかけをつくることは出来るのではないか、と思っています。
そしてそれはこの場所に限った話ではないのです。」

用途:インスタレーション作品
工事種別:
設計期間:2023年1〜3月
施工期間:2023年3~4月
主体構造:
階数:
延床面積:
所在地:千葉県八千代市(TRC八千代中央図書館/オーエンス八千代市民ギャラリーの中庭)
写真:オーエンス八千代市民ギャラリー
伊藤愛との共同作品